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検査室見学ツアー

飯塚病院

※施設名、役職名等は、見学当時のものです。

外注委託(ブランチ化)とコスト競争! 自動化システムで劇的なコスト改善を果たしたラボ

Ⅰ. はじめに

その昔、国内有数の炭坑地域であった福岡県筑豊地区。 その地区の中核病院である株式会社麻生セメント飯塚病院は、診療科目数25科、ベッド数1,157床、1日外来患者数2,300人の大規模病院でありながら、”株式会社”病院であることで有名です。 その”株式会社”病院として知られる要因としては、地域救命救急センターを併設するなど地域医療への積極的な取組みの一方で全国でもトップレベ ルの良好な病院経営状況を達成維持していることがあげられます。

飯塚病院

「医療は営利じゃない、黒字はいばれない・・・」などと批判されながらも、一般企業と同様の”ビジネス・プロセス・リエンジニアリング“を早くより実行して来たことが、結果的には医療の質を維持できるコスト体質を持つ数少ない病院のひとつとして残ることを可能にしました。
さて、その病院の検査部門ですから、サービスの質を維持向上しつつ効率を上げコストを下げるとする強烈な意識を持つ検査部門であることはもちろんです。 しかしそれでも、外注委託(ブランチ化)の検討比較がなされるのがビジネス・プロセス・リエンジニアリングの厳しい経営手法。 医療は単なるコスト比較だけではないとはいうものの、外注委託(ブランチ化)とのコスト競争を逃げることはこの病院では許されません。 そのようななかで当検査室では、安易に外注委託(ブランチ化)の道を選び他人に頼る事をせず、自力での劇的なコスト改善を目指すとともに外注委託方式では不可能なサービス内容強化が計画実行されました。 明確で揺るぎのないコンセプトのもと、LAS(検体検査自動化システム)と LIS(検査情報システム)が導入構築され、A&Tがお手伝いしました。 コスト削減、機器数削減、緊急部門統合、人員削減、スペース削減などのドラスティックな経済的成果に加え、検査迅速化、24時間体制などのサービス向上が実現され、既に2.5年間順調に稼動し、病院の経営に大きく寄与しています。 今回は、その飯塚病院検査室を、吉田技師長と真名子副技師長にご案内していただき、次ステップの方向もお聞きします。

Ⅱ. システム全体図

LAS:A&T/CLINILOG Ver.2 + Bayer/MXS

LAS:A&T/CLINILOG Ver.2 + Bayer/MXS

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LIS:A&T/CLINILAN Ver.7.5

LIS:A&T/CLINILAN Ver.7.5

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Ⅲ. 処理検体(テスト)数/日
分野 テスト/日
①(*は検体数)
オンラインLASでの処理数
LASによる処理%
(②/①*100)
日当直処理数
生化学 5,577 5,527 99% 146
(LAS処理)
免疫血清 93 44 48% 0
血液一般 415* 415 100% 74
(LAS処理)
血液像 211* 199 94% 0
尿定性 153* 0 0 4
(LAS処理)
尿沈渣 83* 0 0 0
計/日 6,532 6,185 95% 220
Ⅳ. 検体の流れ

■ 検体受付

検体受付

検体受付

【真名子副技師長談】「検体受付は3人でやっていますが、担当分析器の立ち上げが終了した者から応援にきますので、多いときは4~5名となります。遠心分離はマニュアルで小型遠心器3台で次々と行いますから、遠心工程に検体が滞留することはありません。この工程の特徴は血液検体分析用の全血検体も生化学・尿生化学・免疫学の検体と同じスタート投入口から投入することで、それぞれの分析に受付担当者を置く必要がなく、ほとんどの検体がこのスタートストッカーに投入されることで検体到着確認登録が自動で行われます。」

■ オンライン/オフライン分注

オンライン/オフライン分注

【真名子副技師長談】「1検体にどんなに多くの依頼があっても、オンライン用子検体1分注(A生化学血清検体:502X+200FR+80FR用)/B尿検体:502X+80FR+EA06U)とオフライン用子検体最多8分注(Axsym用×2、蛋白分画、用手法用など)を1台の分注ユニットで1個のチップでおこないますから、検体のデッドボリュームや使用チップ数も最小に押さえられます。処理能力が心配になりますが、分注アーム2本で2検体同時に分注を行い、平均的依頼内容で時間150~160検体程度(テスト数換算:1500~2000テスト)の処理能力がありますので、当院程度の検体数では問題なく処理できます。また、各分析装置では分注子検体しか使わないため(全血使用装置は除く)、本分注装置の分注時のフィブリン塊による詰まり検出機能により、結果としてほとんどの検体のフィブリン析出チェックを行なっていることになり、各分析装置のフィブリン塊によるトラブルは激減しました。」

■ 免疫分析/オフライン分析(Axsym)

【真名子副技師長談】「感染症・腫瘍マーカー・ホルモン等化学分析にはAbott社Axsymを2台使用しています。オンライン/オフライン分注ユニットのオフライン用子検体トレイに自動的に分注された検体を適当なタイミング(試薬残量、技師のスケジュール等)で乗せ変えセットするだけです。子検体トレイのOn/Off はシステム端末上で自由にできます。現在、感染症の2000年内24時間対応に向けてシステムを検討中です。」
[分析項目]
α-フェト、CEA、CA19-9、CA125、CA15-3、Ferritin、β2-M、インスリン、PSA、HBsAg、Anti-HBs、HCV、Hbe、Anti-Hbe、HBc、TSH、F-T3、F-T4、T4、T3、LH、FSH、PRL

■ 免疫・特殊生化学分析(502X)

免疫・特殊生化学分析(502X)

【真名子副技師長談】「この装置の特徴を生かして、たくさんの項目を載せています。 一回分取で直ちに検体を放す機能により 200FRや80FRと分注子検体が共用できる点や、その時採取した分取検体を装置内で保持し再検できる点などの特徴があり、当検査室の搬送システム全体をコンパクトな1台の分析器にしてしまったようなこの開発思想には感心します。」
[分析項目]
ASO、RA、IgG、IgM、IgA、C3、C4、HPT、PL、U-TP、M-Alb、Fe、UIBC、NAG、TBA、ZTT、TTT、フルクトサミン、CH50

■ 生化学検査ライン/生化学分析(TBA-200FR)

生化学検査ライン/生化学分析(TBA-200FR)

【真名子副技師長談】「生化学主分析装置として東芝200FR2台を使用しています。搬送システム側で2台の装置が抱えた検体の分析残テスト数を比較しながら次の検体を送りつける負荷均等配分機能や、依頼のない検体をパスする機能などが実現されていますので、この分析装置の高処理能力を落とすことなく常時最大の処理能力で稼動します。また、この装置の再検は、改めて親検体から分注して行うのではなく、同一の子検体を使い後続の80FRで自動的に行われますから、502Xと同様に迅速な再検がほとんど意識せずにおこなわれます。 シングルの分析器2台とこの搬送システムを組み合わせる事により、搬送化・シングル分析器の欠点である処理速度や分析器ダウン時対策をカバーしながら、長所である検体量・試薬量の低減や効率性を達成できたと思います。」
[分析項目]
ALT、AST、γ-GTP、LD、ALP、Amy、BUN、Crea、CHE、TG、CHO、UA、CPK、T-bil、D-bil、Ca、IP、Mg、TP、HDL、CK-MB、P-Amy、Glu、Na、K、Cl、NH3

■ 生化学検査ライン/生化学分析(TBA-80FR)

【真名子副技師長談】「サブ生化学主分析装置として東芝TBA-80FR1台を使用しています。200FR同様常時最大の処理能力で稼動し、役割は200FRの再検、生化学特殊項目(薬物濃度等)、尿(502X)のバックアップ用です。」
[分析項目]
ALT、AST、γ-GTP、LD、ALP、Amy、BUN、Crea、CHE、TG、CHO、UA、CPK、T-bil、D-bil、Ca、IP、Mg、TP、HDL、CK-MB、Glu、U-TP、U-BUN、U-Crea、SV、DIGO、PB、TEO、CBZ、DPH

生化学検査ライン/生化学分析(TBA-80FR)

生化学検査ライン/生化学分析(TBA-80FR)

生化学検査ライン/生化学分析(TBA-80FR)

■ 生化学検査ライン/HbA1c分析(HLC-723GhbV)

【真名子副技師長談】「200FRにて糖分析を行い東ソーHLC-723によるHbA1c分析を行うよう搬送ラインに組み込みました。」
[分析項目] HbA1c

■ 生化学検査ライン/電解質分析(EA06U)

【真名子副技師長談】「200FRでの電解質の再検と尿、リコール電解質を測定します。 この搬送システムでのISEの基準となる分析機です」
[分析項目] Na,K,Cl

■ 血液検査ライン(H2+H3+HEG-120NAS)

血液検査ライン(H2+H3+HEG-120NAS)

【真名子副技師長談】「血液分析搬送ラインはBayerメディカル社のH2・H3分析器と塗末標本作製用にオムロンのHEG-120NASを使用しています。(血液像・血球数)約500検体/日を技師1人で処理しますが、H2・H3はグラフィックが表示され、検体凝固の有無が他部門の技師にでも判断でき更に、白血球分類はペルオキシダーゼ活性とLoblation(白血球溶血)で行われており、異型細胞と異常細胞がグラフィックパターン上分離され、血液疾患の病型分類に役立っています。」
[分析項目]
血球計数、塗沫標本作製

■ 尿沈渣検査

【真名子副技師長談】「定性試験にはBayerメディカルのClinitek Atlasを、沈査には SysmexのUF-100をオフラインで使用していますが、沈査の一部は目視にて行なっています。」

尿沈渣検査

Ⅴ. LASの経済的な導入効果
  導入前 導入後 効果
試薬代/年 21,600万円 16,999万円 4,601万円削減
技師数 48人 43人 5人減(自然減)
スペース 36m2(11坪)削減

*技師数削減の内訳:化学分析より3人、一般より1人、血液より1人。
*削減したスペースは循環器外来が使用。

Ⅵ. LAS部門の皆様と吉田技師長

LAS部門の皆様と吉田技師長

【吉田技師長談】「効率を追求する上で大切なことは、一つに柔軟性に富んだシステムを構築することと、二つ目にいかにそのハードウエアーを使いこなすかということです。システム構築後は、技師自身がより柔軟な考えを持ち、従来よりの仕事の枠組みにとらわれず、エリア意識の改善につとめ、積極的にクロストレーニングを始めなければ導入効果は得られないでしょう。
もちろん、コスト面でもサービス向上面でも、まだまだやれる事やるべき事はたくさんあります。 例えば、検査部からの周囲に対する働きかけが必要なのではないでしょうか。 中央検査部というのは病院の中央に位置し、種々の決定事項や、改善事項と密接な関係をもっているということを意識すべきです。 今、盛んに行われているクリティカルパス、DRG/PPS等、検査部無しでは考えられない事ですし、逆に目的達成の為には、このようなことに対しての検査部からの提案が最も重要なこととなってきます。 更に、研修医に対するトレーニング、医師に対して専門分野としての意見等、病院のチームの一員としてやらなければならないことは多々あります。 これからも、経済的効率を上げながら検査室の存在意義の強化を目指して行けば、簡単にブランチ化やFMS化へ移行させずに済むと思いますし、そうすることで病院は検査室の経済性だけでない前進もできると思います。」

飯塚病院による関連論文や発表

飯塚病院
病院ホームページ:http://aih-net.com/

いまも残るボタ山
いまも残るボタ山

ご案内と掲載許可をくださいました、吉田技師長をはじめとする飯塚病院検査部の皆様に、心よりお礼申し上げます。